妊娠期間中や出産に関する情報サイトはたくさんありますが、アメリカに来て初めてだらけで何を調べたらいいか分からないという方もいらっしゃるでしょう。ここでは一般情報サイトでは得られなかった妊娠・出産に関する保険の事や実際にアメリカで出産を経験した人たちの感想を参考にしていただければと思います。
■初診検査と妊婦健診
先ずは妊娠をしているかもと思ったら、産婦人科を受診をして医師にて正確に確認をしてもらいましょう。
Q. アメリカの産婦人科はどうやって探したらいいのですか?
A. OB/GYN(Obstetrics/Gynecology)を専門としている医師に予約を取ります。
アメリカで加入されている医療保険のサイトにて、”Find a provider”からZipcodeやCity名を入力して近くの専門医や病院を検索することができます。ポイントは、病院を探すのではなく、希望の医師を先に選び、その医師オフィスに予約を取る必要があります。
<検索時のイメージ例>
①医師と専門医というカテゴリー
②検索結果で表示された医師の中から、住所を見て自宅からの距離、In Network*1、評価などを確認して選ぶといいでしょう。
*1 保険会社が提携契約している医師や病院などをIn Networkといい割引価格で医療サービスを受けられます。提携外は Out of Networkといいます。
Q. 英語が苦手で予約をする時にうまく伝えられるか自信がありません、通訳サービスはありますか?
A. 医師オフィスでは予約を取る時の通訳サービスは提供していませんが、オンラインから予約をする、保険付帯サービスを利用して予約をしてもらう、個人で通訳を依頼することとなります。
医師オフィスのウェブサイトにてSchedule Appointmentなどと予約画面が設けられていれば、ウェブ上で予約が取れることがありますが、電話での予約が一般的です。ヘルスケアプログラムの会員であれば、希望に応じて電話予約をお手伝いいたします。ヘルスケアプログラムの会員以外の方は、プレミオデイリーライフケアにご入会いただくと、病院の予約から日常生活で困った時などにも通訳サービスを利用することができます。
わたしは妊婦健診を受けるように案内された期間や回数に合わせて、早めに今後の予約を纏めて取っておきました。後で毎回電話をする必要がなく、予約がいっぱいで希望日に受診できない、ということもなかったので良かったです。
一人の先生ではなく同じオフィス内に複数の先生がいたので、いろいろな意見も聞いてみたいと思って、妊婦健診をあえて別の先生で予約をしました。おかげで色々な先生と仲良くなれて意見もとても参考になりました。
■保険でカバーされる内容と出産・妊娠にかかる費用
アメリカの多くの雇用医療保険には、妊娠・出産に関する補償が含まれています。妊娠確認のための受診、妊婦健診、異常の受診検査、分娩費用、出生時の新生児費用等。ですが、各雇用先の加入保険会社とプランにて補償範囲は異なりますので必ずご自身で保険の内容を確認してください。
そして、アメリカの医療費が高いというのは耳にしたことがあるでしょう。出産までにかかる医療費は平均で合計約1万8千ドルかかり、自己負担となるのが約2800ドルと言われています。帝王切開となった場合は更に高くなり平均で合計約2万6千ドルかかり、自己負担は約3200ドルと言われています。海外旅行保険では基本、正常妊娠と出産は病気ではないため補償範囲外とされています。
また、アメリカにはGlobal Fee (for pregnancy)というのがあり、特定の医療サービスの全体的な費用を一括で請求する料金の仕組みのことを指します。この仕組みを請求方針としているかは産婦人科医師オフィスにより異なります。保険による補償がない場合は1万ドルから2万ドルほどの額を一括で払ってくださいと請求されます。一括払いが難しい場合は分割払いができるのか相談をしてみましょう。Global Feeを適用しつつ、産婦人科医オフィスから保険会社へ請求後、差額を患者に自己負担として請求されることもあります。
<妊娠出産のGlobal Feeに含まれているのは主なサービス>
- 妊娠初期から出産直前までの妊娠中の定期健診(Prenatal Care)
- 陣痛時や分娩時の医療対応(Delivery Service)
- 産後6週間程度の産後ケア(Postpartum Care)
<Global Feeに含まれないことがある追加費用>
- 詳細な超音波検査や遺伝子検査などの高度な検査に関わる費用*2
- 妊娠糖尿病などの合併症のための治療
- 新生児が集中治療室(NICU)に入る必要となった場合の費用
- 無痛分娩の麻酔費用
- 出産をする病院の施設費用*3
*2 アメリカでは遺伝子検査でダウン症のリスクがないか妊娠中に検査ができる技術が進んでいますが、あくまでも患者の希望による検査となり、保険で補償されないため、高い検査内容は数千から1万ドル以上も請求されることがあります。これらの検査を受ける場合は、医師から詳細を聞いて保険会社に保険補償対象かどうか事前に確認するなどして慎重に検討をしましょう。
*3 アメリカでは医師費用、検査費用、施設費用、処方箋費用などとそれぞでで会計管理が分かれているためです。
Q. Global Feeに含まれていない費用は保険でカバーされないのですか?自己負担以外は保険でカバーされると思って大丈夫ですか?
A. Global Feeには含まれていない妊娠糖尿病の治療費用、無痛分娩の麻酔費用、出生時の施設費用、新生児が集中治療室に入った場合の費用はご加入の保険にてカバーされることがあります。カバーされても自己負担額にあたるDeductible、Co-Insuranceはご加入の保険により異なります。
その他、妊婦用ビタミン剤、両親学級、授乳パンプ(ブレストパンプ)は保険でカバーされないことも多いので購入前に確認をしましょう。
■陣痛促進剤と無痛分娩の選択は自分次第?
お腹が痛くなり病院に向かっても陣痛の間隔が十分でないと一度家に帰るように言われることも珍しくありません。アメリカでは医師の確保が難しい状況であるのと、患者の滞在時間が長くなると必然的に医療費も高くなります。 もしその様に案内された時は落ち着いて、両親学級で学んだ事、医師から説明された事を思い出して陣痛の間隔が短くなっていくか様子をみましょう。
陣痛の間隔がなかなか変わらない場合、医師が診て陣痛促進剤を投入するタイミングかどうか判断と指示をしてくれると思いがちですが、アメリカでは「強くなるのを自然に待ちますか?それとも薬名〇〇という促進剤を入れますか?」と患者にどうしたいか希望を聞かれます。その際、一般的に使用されている薬であるとは伝えられても、副作用の可能性ついては説明がされません。
自然分娩か無痛分娩にするかも基本的には患者の選択となります。無痛分娩を希望した場合の麻酔薬についても同様に、複数の中からどれがいいか患者に選択を求められることがあります。両親学級で一般的に使われている麻酔薬の種類や副作用について教えてくれるところもありますが、自身で事前に調べておくのも大切です。
■出産する予定だった病院が急に変更になることもある
日本と同じくアメリカでも妊娠期間中に前もって出産をする時の病院を決めておきます。それにも関わらず、出産予定日の近くになって、または直前になって変更になることもあり得ます。そんな状況でも無事に出産を終えて赤ちゃんを迎えられたというアメリカ出産経験者ママさん達からのお話です。
わたしは勤め先の会社が提供する保険を利用してIn Networkの産婦人科医に診てもらっていました。年末近くに翌年の保険会社が変更されると説明があり、幸い産婦人科の先生は新しい保険でもIn Networkでしたが、出産を予定していた病院は提携外でした。予定日までは年を跨ぐため、自己負担が高くならないように別の病院を探すことにしました。変更先も大きい病院で、出産当日は問題なく元気な赤ちゃんを産むことができました。
わたしは陣痛が始まったので決めていた病院に向かおうとしたところ、急に受け入れられないと言われてしまいました。代わりに近くの別2つの病院を紹介されてどちらがいいか聞かれたので保険の提携内で評判がいいと聞いたことがある方を選びました。すぐに元の病院から紹介先病院にわたしの医療情報の連携と出産の入院手配もしてくれたので、わたしたちは新しい病院に向かうだけで済みました。陣痛の中、想定外の急な出来事に驚きましたが、先生も看護師さんもみんなフレンドリーで、赤ちゃんは1時間もかからずに無事に生まれてきてくれました。
■病院のポータルサイトを活用しよう!
病院によっては患者向けにポータルサイトを設けており、患者がアカウントにログインすると、例えば最近出産した人が必要なケアや新生児のケアに関する情報を見ることができます。アメリカは出産の時でも2、3日で退院となります。様態次第で1日ということもあります。短い期間で退院したからすぐに日常生活で動ける訳ではなく、自宅で静養するときは十分に気を付けなければなりません。そんな動けない時に体調の変化から疑問がでても、また予約を取って病院に向かうのは体に負担がかかるでしょう。症状が重くなければ予約を取らずとも先生宛に気軽に質問ができるようなっています。もしご利用の病院で同じようなポータルサイトがあれば是非活用をしてみてください。
ヘルスケアプログラムの会員であればオンライン健康相談サービスにて日本語で日本の医師に相談することができます。
(ご加入のプログラムによりサービス範囲が異なります。)
分娩時に立ち会ってくれる先生は初対面であることがほとんどなため、両親学級で学んだり自分で得た知識が、当日に先生から言われたことと違うと疑問を抱く状況になるかもしれません。そんな時は立ち会ってくれている先生や看護師の説明を聞いて、とにかく無事に赤ちゃんが生まれてきてくれるように頑張りましょう。
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